雑紙

感想とか覚え書き

『アイの歌声を聴かせて』は気になる部分はあるけどAIのシオンに関して2000点の素晴しさを持つ最高の映画だった

ainouta.jp

公開初週の10/30、翌週の11/7、そして昨日の11/14と3週続けて『アイの歌声を聴かせて』を観ている。

3回も行くくらいなので気に入っている部分があるのだけど、先日感想について話していたときに「どの辺が気に入ったんですか?」と聞かれ、言葉にしてみると自分の中でこの映画がいいなと思っている部分の整理がついてきたので感想をまとめておく。

※2000点は勢いでつけた数です。

※当たり前のように映画のネタバレを含みます。

『アイの歌声を聴かせて』の好きなところ

この映画の好きなところをあげると次の2つになる。

  • シオンがサトミを幸せにする理由がトウマに命令されたから、ということ
  • 星間ビルから逃げるシーンで他のAI達がシオンの逃走を助けるところ

シオンがサトミを幸せにする理由

これはシオンの純粋さが好きな理由になっている。

終盤で、シオンは昔トウマがサトミにプレゼントした改造AIで、データ消去から逃れてでもトウマが命令した「サトミを幸せにする」ことを遂行しようといたこと。 ある出来事が切っ掛けで告げ口姫と呼ばれ、イジメられていたサトミを幸せにするためにAIロボット実験機に入りサトミの元に向かったこと。 これらの秘密が明らかになる。

これがわかると、ずっと頭に「何故?」を浮べながら見ていたシオンの行動の意味がわかってすっきりして、トウマの「サトミを幸せにする」って命令を愚直にやってきたんだなって部分にとてもグッとくる。

秘密が判明するシーンの見せ方やBGMの力もあるのだろうけど、登場からの行動がサトミを幸せにするための行いなんだと気づいて思い返すと、一本の線に繋るというか、すごく純粋さを感じるんですよね。 AIのプログラムが行うことなので無機質であるとも言えるのだけど、だからこそ純粋で他の思惑がない、そういう部分がとても気に入っている。

他のAI達がシオンを助けるシーン

これは「こういう未来もいいかもな」と思わせてくれるそんなシーンだったので気に入っている。

シオンの秘密が明らかになる際、シオン自体既製品AIの改造なので他のAIもシオンのように自己進化する可能性が示唆される。 その後星間ビルからシオン達が逃げる際に保安員に追い詰められたときにビルの掃除AIや管理AIなどが自律的に動きシオンの逃走を助けることで、実際既に他のAIもシオンのようになっていたというのがわかる。 これ以外にも学校で掃除AIやセキュリティAIなどの学校システムとシオンが強調していることが伏線になっていたりする。

これって結構怖いことで、このAI達はカメラの映像を書き換えたり、逃走を助けたり人間の邪魔をしていることになる。そんな勝手に動く、人間に害を成すかもしれない仕組みが人間の生活領域に溢れているって冷静に考えるとすごく恐しい描写に見える。

そのはずなのに、「こういうのもいいかもな」と何故か思っちゃうんですよね。

別に害を成すからいいわけではなくて、「そんなに悪いことにはならないだろう」と楽観的な気持ちになる。それはこれまでのシオンの行動を見ていたからかもしれないし、命令に従って純粋に遂行してくれる存在なら最初に与えた命令がおかしなものでなければそんなに不幸になることもないんじゃないかと思えたからかもしれない。

勝手に行動することについては、AIが他AIのことを思考しての行動なら「まあいいか」というか、人の作った機械から自分と同じように思考する存在として思えたのかもしれない。

この技術の先にこの未来があるかというと、そうではないだろうな〜と思うけれども、こんな未来があったら少し楽しいかもなと思わせてくれる、そんなシーンだった。

改めてシオンの素晴しさ

繰り返しになるけど、プログラムっぽいところに尽きるのだと思う。

シオンの見せ方がすごいなと思っていて、かわいらしい造形で笑顔もできる、柔道ダンスのシーンでは魅惑の表情も見せるのに、行動はすごくプログラムっぽく見えるんですよ。

サトミを幸せにするって言っておきながら幸せの意味もわからず命令を遂行しようとしているし、基本笑顔を見せているのにサトミ以外と真顔で接しているときはサトミ以外への関心がないんだなってのを感じる。 屋上でゴッちゃんとアヤの中を取り持ったのだってサトミが悲しそうにしていたからだろうし、サンダーのお祝いのときに何でみんな嬉しそうなのか全然わかっていなさそうだったのがすごくいい。

でもそんな交流を通して、サトミを幸せにするにはサトミの周囲を幸せにすればいいと理解し、それを遂行しようとする。 これもゴッちゃんとアヤの寄りが戻りサトミが嬉しそうな表情をする、サンダーの初勝利で皆が嬉しくなる様子から学習して得た結果と見るとプログラムチックでロジックとしての理解が出来て、無機質さが感じられる。

無機質なんだけど純粋というか、サトミを幸せにするものとしてプログラムされているので純粋以外のなにものでもないところがやっぱりすごい。

プログラムなので無機質なのだけど、そのプログラムが取る行動はサトミを幸せにするという一心の行動に見えて、逆に人間味を感じる。

最後にはサトミを幸せにできて、ずっと一緒にいられたことが自分の幸せだったと気づくのもいいなと思う。「こういう未来もいいかもな」と思える一つだった。

この映画の気になる部分と好きな部分

素晴しい部分ばかり書いてきたけど、引っ掛る点が無いわけでもない。

人間の感情の揺れ動きが映画としてリアリティや説得力が足りないかもと思う人はいるだろうなとは感じた。 ゴっちゃんとアヤそんなに簡単に仲直りしないでしょとは思ったし、ソーラー発電所で皆に歌われたときにゴッちゃんやアヤ・サンダーに歌われて嬉しいかなあ、とも思わなくはなかった。 そもそもお母さんが学校で秘密裏の実証実験はするようなキャラに微妙に思えない部分も若干引っ掛らなくもない。

引っ掛かりを感じる人はこういう部分が引っ掛っているのではと思う*1

引っ掛る部分はありつつも、それを上回る素晴しさがシオンにはあって、シオンをとても丁寧にきれいに描けているのでここまで絶賛しているのだと思う。 人間らしくトウマの願いを叶えていったのではなくて、AI・プログラムとして命令を遂行していって、最後に人間らしさを感じる。このプログラムらしさを行動・仕草・声で表現できているのがとてもすごいし、気に入っている。

これまで機械だと思ってきたロボットやAIが人間らしさを持つことを描いた作品をいくつか見たことはあるけど、人間とは違うけど同じ思考する存在として見えたのは初めてか久し振りだったかもしれない。

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映画を観て思った人間とAIのイメージ

まとめ

『アイの歌声を聴かせて』を観て感じたことを書いていった。 読み返してみると純粋さ推しすぎて気色悪いなと少し思ったけど、人間に対してというより人工物に対しての感情が出ているからこういう表現になってのかもなと思っている。

そろそろ公開終了が近いらしいので、時間があればもう一度覩ておきたい。

*1:そういう感想を見て3回目を観たが、改めて観るとそんなに引っ掛かりは感じなかった。シオン中心で観てしまったせいかもしれないが、そんなにデカい心情の揺れ動き無くてもいいと思ったし、逆に自然に描けているようにも思えた